こんにちは、店長の大浦です。
西荻窪「ていねいに、」の料理家cayocoさんの春夏秋冬の旅とレシピを本にするプロジェクト「food letters」が始まりました。今日ご紹介したいのは、「food letters」のはじまりの物語。なぜ私たちが本づくりをすることになったのかをお話したいと思います。
「息継ぎ」のようにお店へ通っていた時代
福岡県へ移り住む前、私は東京都の西荻窪で5年ほど暮らしていました。cayocoさんと出会ったのは、「ていねいに、」がオープンする数日前のこと。
散歩途中の夫と「なんだか素敵なお店ができているね。」と覗き込んだところ「今度オープンするのでよかったら来てください。」と柔らかな笑顔で答えてくれたのが、cayocoさんでした。
第一印象は、透明感のある空気を纏っている人。cayocoさんとお店の雰囲気に興味をもった私たち家族は、オープン早々にごはんを食べに行きました。そしてホッとする優しいごはんに心が癒され、それからというもの「息継ぎ」のようにお店へ通っていました。忙しい毎日で心と身体がかたくなった時に訪れると、柔らかな心をつくってくれる居場所。それが私にとっての、cayocoさんのごはんでした。
cayocoさんがいつも教えてくれるのは
「そこに心があるかどうかが大切」ということ
福岡へ移り住んだ後も、当店の連載「身体の声によりそって」「男の優しいごはん」でご協力いただき、cayocoさんの料理に対する想いに触れることに。
「誰かのためにごはんは、それだけでもう優しいごはんだと思います。」
「ジャンクフードを食べたりする時、罪悪感をもって食べることはないと思うんです。心で食べることが大事だと思います。」
食の大切さを語る時、白砂糖やコーヒーはいけない、動物性は控えるべき、玄米中心の食を、など「何を選ぶべきか」という情報は山ほど溢れているように思います。けれども、cayocoさんがいつも教えてくれるのは「そこに心があるかどうかが大切」ということ。
否定するのではなく、包み込む。取り除くのではなく、受けとめる。その姿勢に、私はお店のコンセプトとして胸にもっている「優しいこころとくらしをつくる」ための、大きな力を感じたのです。cayocoさんが信じている食の力を、私たちも信じたい、と。
「私はこの企画をひそかに、food letters と名付けました。」
ある時の取材の終わりに、「保存食には興味ありますか?」と雑談をしたことがありました。それは、料理ができない代表の高崎が、妻の私が倒れた時に、コンビニのお弁当ではなくcayocoさんのごはんを子供に食べさせたい、という悩みをずっと抱えていたからというもの。
そんな小さな雑談をきっかけに、cayocoさんからこんな相談のメールが届きました。cayocoさんが地方で、その場にある食材で保存食を作り、その保存食をもって次の場所へ移動し、その土地のものとコラボをさせた料理を作りながら旅をする、というお話。
「私はこの企画をひそかに、food letters と名付けました。
もしもタイミングが重なればこの企画を取り上げて頂く事はできますか?もしも可能であれば、この企画をまいさんの言葉で伝えてもらえたら、こんな幸せなことはありません。」
「food lettes」。その名に込められている可能性を大きく感じた私たちは、クラウドファンディングで資金調達をして、旅とレシピの本をつくるプロジェクトを立ち上げようと、cayocoさんへ提案をしました。
共通するのは、
食に対する想いと、社会に対する想い
旅を通じて、cayocoさんが何を感じ、何を作り、何を想うのか。それを隣で追いかける立場として、私たちで相応しいのかと悩むこともありました。けれどもそんな時、cayocoさんはこんな言葉をかけてくれました。
「まいさん(私の下の名)の心穏やかになる、やさしく、ていねいな文は、私は他に読んだ事がありません。もしも私が人に伝える事に言葉が必要になったら、まいさんに一番に相談しようと思っていました。
日々生活の中に仕事があり、育児もあって、どうやって穏やかな時間を作っているのだろうと、今朝も自転車をこぎながら、まいさんってすごいな~すごいな~って(笑)」
正直、私はこの大役のプレッシャーに押し潰されそうになることもあります。けれども、何度も振り返るのは旅を通じて、本を通じて、何をお客さまへ届けたいのか、ということ。そしてそこには、少し大げさに聞こえるかもしれませんが、食に対する想いがあり、社会に対する想いがあるのです。
人が優しく生きることを手助けするために、世の中がほんの少し優しい方へ動くように。誰もが当たり前に繰り返している「食べること」を大切にすることで、その小さな力になれたらと私たちは願っています。
私たちが歩み出した小さな一歩に、大きな風を吹かせてくれる仲間が集まってくれることを想いながら。共に歩んでくださる旅の仲間を、心よりお待ちしています。どうかこの想いが届きますように。
この特集の目次
- 西荻窪で優しいごはんを作るcayocoさんの、春夏秋冬の旅とレシピを本にするプロジェクトが始まります!
- 料理家cayocoさんのポートランドの旅から見える、心も町も動かす食の力
- cayocoさんがポートランドで出会った、つくる人の「好き」が伝わってくるごはん。
- ポートランドの旅のおすそ分け。シンプルなのに美味しいホットパンプキンディップの作り方。
- 「food letters」のはじまりの物語。私たちが旅へ出て、本をつくる理由。
- 旅と本のイメージを膨らませる「food letters」のフライヤーができました!
- 旅先から届く絵葉書が、ポストに入っていた時の気持ちを。food lettersのInstagram。
- 旅を実況中継中!food letters第一弾、津屋崎の旅の様子をお届けします。
- food letters第一弾、人との出会いを味わう、津屋崎の旅が始まりました!
- 心が大きく踊る、彩り豊かな料理家cayocoさんのごはん
- 料理家cayocoさんの旅の原点、ポーランドの自然体な生き方から学んだこととは。
- 料理家cayocoさんのレシピ本を作る旅・food letters、春の旅の速報をお届けします!
- どんな本とお便りが届くの?クラウドファンディングで応援してくださる方に届けたいもの。
- 料理家cayocoさんの食と人をつなぐ旅 第1話「かわいい」と感じる目と心。そこにはいつだって愛がある。
- 人と同じように野菜に対しても、心を大切に置くこと。
- 旅先で心に沁み渡る、一日が穏やかに終わることの尊さ。
- 知らないって寂しい。知るって嬉しい。だから人は優しくなれる。
- 旅の偶然の出会いは、なんでもない風景を忘れることのない景色へと変える力がある。
- 料理はこんなにも人の心を伝えてくれる。
- 人が人を想う心は見えないけれど、本当はこの世界に溢れている。
- 夏は小豆島へ!料理家cayocoさんの、食と人をつなぐ旅「food letters」第二弾が始まります!
- 醤油、塩、オリーブオイルの生産地へ。料理家cayocoさんの小豆島の旅のルートをご紹介。
- 料理家cayocoさんの食と人をつなぐ旅・food letters、小豆島の旅の速報をお届けします!
- 春夏秋冬の旅のお便りが届く、レシピ本「food letters」の特典付き先行予約が始まりました!
- 秋は長野県へ!料理家cayocoさんの、食と人をつなぐ旅「food letters」第三弾が始まります!
- 料理家cayocoさんが旅の出会いを届けるfood letters食堂で、旅の追体験を!
- 料理家cayocoさんの食と人をつなぐ旅・food letters、長野の旅の速報をお届けします!
- 旅のはじまりは、国内初有機オリーブ栽培に成功した小豆島・山田オリーブ園へ
- 観光客の声で美味しくなる?ヤマロク醤油の常識の真逆をいく醤油づくり
- 「みてやらないかん」の心が映る、塩屋波花堂の驚くほど優しい味の塩
- 「自分が幸せにできる人は見渡せるくらいでいい」長野県佐久の星の坊主さま・こじょうゆうやさんに聞いた、ごきげんな畑の話
- 集まった人たちの心でとびっきり美味しいごはんが生まれる。阿智村の森田自然農園の「茗荷祭り」。
- ついに最後の旅。冬は島根県雲南市へ!料理家cayocoさんの、食と人をつなぐ旅「food letters」第四弾スタート!
- 料理家cayocoさんの食と人をつなぐ旅・food letters、島根の旅の速報をお届けします!
- できるかできないかではなく、やるかやらないか。島根県雲南市の妹尾さん家族と過ごす、自給自足の暮らし体験。
- 生きる力ってなんだろう。旅で始まったデトックスが教えてくれる、心と体の声。
- 料理の心の置き場所を変えた、鶏を絞めるワークショップで学んだ、命のつながり。
- 食の根源を教えてもらった島根県雲南市の旅。人も、ごはんも、巡り続けるエネルギー。
- レシピ本「food letters」に関する大事なお知らせ
- 書籍「food letters」制作・出版元変更のお知らせ
お知らせ
心がひとりぼっちになった時、そっと言葉で明かりを灯してくれる本、当店オリジナル、作家小谷ふみ著書「よりそうつきひ」が発売となりました(ご購入はこちらから)。 どこか切なくて、寂しくて、愛しくて、ホッとする。なんでもない一日を胸に焼き付けたくなるようなショートエッセイが束ねられた短編集です。読んでいると大切な人の顔が心に浮かんでくる世界が広がっています。