こんにちは、大浦です。
先日お知らせした、西荻窪「ていねいに、」の料理家cayocoさんの旅をレシピ本にするプロジェクトについて、第1弾の旅先である福岡県津屋崎町のプランを相談するため、津屋崎野菜の宅配と子どもたちの寺子屋を営んでいる、三粒の種さんの元へ行ってきました。
訪れたのは、彼らの拠点でもある「浜の家」と呼ばれる場所。津屋崎海岸沿いに立つ、築65年の古民家です。この日は天気が良く、縁側に差し込んでいるお日様がぽかぽかでした。
「日程が近づいたら、
旅の5日間のゴールが何かを共有しましょう」
三粒の種の木村さんと角さんは、この春から民間学童「放課後クラブ」をスタートするとのこと。これまで寺子屋と部活動という取り組みをしていましたが、今後は子どもたちの生活の場として、学ぶ心と遊ぶ心に寄り添う放課後の居場所になるそうです。
津屋崎という町は、海、森、山、畑、神社、ものづくりの場があり、お二人はそこで暮らす人たちと支え合いながら活動をしています。food lettersの旅では、そんなお二人の力を借りながら、どんな農家さんや漁師さんと出会うことができるのか、どんな食材と出会えるのか、話を膨らませました。
旅のイメージがだいぶ決まってきたので、今後必要なことは何かを聞いたところ、角さんからこんな言葉が返ってきました。
「日程が近づいたら、顔合わせをしてコンセプトの確認と、旅の5日間のゴールが何かを共有しましょう。」
私は「プロジェクトをやる前に一度立ち止まりましょう。」という角さんの提案に「え!」と驚いたのですが、その後「なるほどなあ」と唸ってしまいました。当店の特集「聞く力」でもお力を借りた木村さんと角さんは、町のお祭りやイベントなどの運営にも深く関わっていて、複数の人たちの意見をすり合わせるような場づくりに携わってきた経験をもっています。
「何をやるか、やりたいことを話すのは楽しいんだよね。それでなんとなくも進んでいってしまう。だけど『何のために』を話すことで見えてくることがあるんだ。」と教えてくれた木村さん。すかさず「立ち返る勇気ってやつです」と角さん。
一度足を止めて地図を見返すことも大切
私たちもお店づくりの中で、スタッフや協力いただいている関係者が複数集まると、意見がまとまらない場面に遭遇することがあります。それぞれがもっている「これが良い」「これがやりたい」という思い。正直、どうやって進めていけば良いのか頭を悩ませることもあったのですが、この日お二人の言葉を聞いて、ていねいにゴールを共有することの大切さを教えてもらいました。
いま、自分たちはどこへ向かっているんだっけ。
これは何のためにやっているんだっけ。
人が集まることで、アイディアやスキルの化学反応が起きることは、一人では味わうことのできない、人とものづくりをすることの醍醐味だと思います。けれども、一度足を止めて地図を見返すことも大切なのだと。
お店づくりの中では、地図をみている暇もないほどにスピードアップしなくてはいけないシーンも多々ありますが、お互いに頭に入れていた地図は少しずつ見え方が違ってくるもの。ていねいに地図を見つめ直すという作業を今後は取り入れていきたいなあと思いました。
何かに迷った時、いつもとは違う場所にいる人の言葉に耳を傾けると、かたくなっていた頭も心もほどけていくものですね。当店に訪れてくれるお客さまにとっても、私たちがそんな存在になれたらと願っています。
お知らせ
心がひとりぼっちになった時、そっと言葉で明かりを灯してくれる本、当店オリジナル、作家小谷ふみ著書「よりそうつきひ」が発売となりました(ご購入はこちらから)。 どこか切なくて、寂しくて、愛しくて、ホッとする。なんでもない一日を胸に焼き付けたくなるようなショートエッセイが束ねられた短編集です。読んでいると大切な人の顔が心に浮かんでくる世界が広がっています。